AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する






     午睡


      広々とした草原、頭上に鎮座する青い空。
      その下で、アコライトは肩を落とした。
      ぽち(子デザートウルフ)の散歩に行くといったきり帰ってこない剣士を探してきてみたら、
      彼は草原の上で昼寝していたのだった。
      腕を投げ出して気持ちよさそうに眠っていて、足の方にぽちが身を丸めて寝ている。
      いくらいい天気でも、少しばかり無防備すぎないだろうか。
      好戦的な魔物は棲息していない地域とはいえ、町の中も安全とは言えない昨今だ。
      冒険者たちとて、全員が善良なわけではない。
      起こそうかどうしようかと彼を見下ろしていて、
      その腹にもたれかかるようにして置いてある奇妙なものを見つけた。
      不思議に思って身をかがめると、それは一抱えぐらいの人形だった。
      ぬいぐるみと言った方がいいかも知れないそれは、アコライトの姿をデフォルメしたものだった。
      それだけならいいのだが、かぶっているハットといい短めに縫ってある青い髪といい。
      自分に似ているとアコライトは思った。
      後もう一つ、ハットに貼り付けてある紫色の札に書かれている言葉が気になるところだったが。
      拾い上げて近くで見てみても、なかなかいい出来だ。
      しかしなぜ剣士がこのようなものを持っているのかはいくら考えてもわからなかった。
      とりあえず起こすかと、肩に手をかけて軽く揺さぶる。
      「ほら、起きなさい」
      「うー…?」
      少しうめいたと思ったら顔の向きを変えてしまった。
      「……襲っちゃうよー」
      耳元でぼそりと呟いたのと同時に、ベルトに手をかける。
      かちゃりと小さな音がした。
      「う、わあっ!?」
      がばっと剣士が身を起こした。
      まだ半分寝ぼけている目でアコライトを見ている。
      「おはよう」
      アコライトがにっこりと微笑むと、目をこすりながら挨拶を返した。
      「おはようございます……」
      ぽちの方はまだぐっすりと寝こけている。
      「……あれ。どうして貴方がここに?」
      二、三度首を振ってようやく頭が働いてきたのかそう尋ねる。
      「いつまでたっても戻ってこないからね、心配になって」
      「あ、お手数をおかけしてすいません」
      律儀に頭を下げる剣士に、アコライトはゆっくりと首を横に振った。
      「気にしなくていいよ。それより…」
      傍らの地面に置いてあったぬいぐるみを手に取る。
      「これ、どうしたの?」
      「ああ、プロンテラのぬいぐるみ職人さんに貰ったんですよ」
      戻ったら見せようと思って、と剣士は笑ったがアコライトは何となく納得がいかなかった。
      「どうして君にくれたんだろうね」
      「さあ……。あ、もしかしたらこの間バッタ人形を持っていったお礼かも知れません」
      「そうかもね」
      剣士がそう思っているのならそれでもいいが、何故わざわざアコライトに似せて作る必要があるのか。
      大体が札の文字がどうにも気にくわないのだ。
      「その札、何のために貼ってあるんだろう」
      「飾り、じゃないですか?」
      飾りにしては文字が変だということに彼は気が付いていないのだろうか。
      その札には、流麗な筆文字でくっきりとこう書いてあるのだ。
      『変態退散』。
      喧嘩でも売ってるのか、とアコライトが心の内でこっそり思った文字だった。
      それに、男にぬいぐるみを贈って喜ぶとでも思ったのだろうか、あの職人は。
      仕事しろ。
      「……どうかしました?」
      黙ってしまったアコライトを心配してか、剣士が顔をのぞき込んできた。
      「いや……私も寝ようかな」
      何となく疲れを感じて、ごろりと草の上に寝っ転がった。
      鮮やかな青と白の対比が美しい。
      「君が気持ちよさそうに寝てたからね」
      「晴れてますから、草が太陽の匂いですよ」
      目を閉じていたら、本当に眠気が襲ってきた。
      「見張り、よろしく」
      「はい、お休みなさい」
      たまにはこんな午後もいいかも知れないと、睡魔に身を委ねた。


      次にアコライトが目を覚ました時、横で熟睡する剣士の姿があったという。



      End.





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